NEW!私の本棚 第9回

「ダイバーシティ&インクルージョン」を考える

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初心者必読の本から上級者向けの本、「座右の書」などを推薦者のコメントとともにご紹介するコーナー。第9回のテーマは、「ダイバーシティ&インクルージョン」を考える、です。価値ある一冊に巡り合う一助となれば幸いです。

写真:宮森未来

今回の推薦者
人事部 ダイバーシティ推進室
室長
宮森未来

推薦者コメント

業務柄、専門書を読むことも多く、その領域でお勧めしたいものもたくさんあります。ですが、今回はあえて「学ぶ系」の本ではなく、実際に起こった誰もが知る事件や具体的な事例からダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I)を読み解くもの、答えの無い問いかけから自分なりの視点でD&Iを考えるきっかけとなる本をご紹介します。「なるほど、これも多様性か」とD&Iの捉え方の枠組みが広がるような本を、“多様な角度”から選んでみました。ぜひ手に取りやすいものから、D&Iを考えるきっかけにしていただければ幸いです。

多様性の科学
画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織

もし今回1冊しか紹介できなかったとしたら、こちらをお勧めします。ダイバーシティへの理解を深めたい方はもちろん、“ダイバーシティ”や“多様性”と言われても「ビジネス上の必要性が理解できない」「頭では分かるがイマイチ腹落ちしない」「ヒエラルキー型組織も必要なのではないか」など疑問やモヤモヤ感を覚える方にこそ読んでいただきたいのがこの1冊。「9.11はなぜ防ぐことができなかったのか」「ナチスの暗号機『エニグマ』はなぜ破られたのか」「エベレスト大量遭難事故はなぜ起きたのか」など歴史的な事件・具体的な事例から、身近なダイエットの話までさまざまな切り口から多様性をひも解きます。著者は、パキスタンと北ウェールズにルーツを持つ若きジャーナリスト。英オックスフォード大学を主席で卒業し、卓球選手としてもオリンピックに2度出場した俊英でもあります。本書を通じて、多様性への学びはもちろんVUCAの時代を生きるヒントが得られると思います。

[著]マシュー・サイド
[出版社]ディスカヴァー・トゥエンティワン
[発行年月]2021年6月

天然知能

ダイバーシティや多様性という言葉に少々「おなかいっぱい」と感じている方には、こんな多様性の視点に触れてみるのはいかがでしょうか。著者は、早稲田大学の教授で理学博士の郡司ペギオ幸夫氏。「人工知能」「自然知能」に対して「天然知能」という新たな概念を提示します。著者独自の奥深い思考に触れ、一気にその世界に引き込まれる1冊です。本書では「人工知能や自然知能には創造性がなく、天然知能だけが創造性を持つ」と論じます。著者はこうも語っています。「自分らしく生きる者は、自分勝手で利己的な者でしょうか。逆です。周囲を気にせず、創造を楽しむ者だけが、他者を受け入れることができるのです。(中略)だからこそ、周囲を気にせず、まるで孤立して、一人で勝手に創作しているように見える者だけが、知覚しえない他者を、受け入れることができるのです。自分らしく生きる者だけが、外部に対して開かれるのです」。「これこそが『個』の多様性と言えるのでは?」と新たな視点を得られるはず。正解の無い時代、ダサくても、カッコワルくても、自分らしくあることを肯定できる1冊です。

[著]郡司ペギオ幸夫
[出版社]講談社
[発行年月]2019年1月

多文化社会で多様性を考えるワークブック

書籍名のとおり、手を動かしながら多様性を学ぶことができる1冊。どこからでも始められる1章完結型の構成で、具体的なケースを通じてミニワークができる仕組みです。「国籍」「宗教」「ジェンダー」「言語」など幅広いトピックを扱っているため、一見すると「目に見える多様性(デモグラフィー型の多様性)」を理解するための内容にも思えます。しかし、その本質は、自身の価値観や物事の捉え方を知る自己認知を高めつつ、「『自分とは違う誰か』を理解する思考力」と「他者との違いを尊重したコミュニケーションを実現する共感力」という二つの力を鍛える点にあります。さらに「アサーション・トレーニング」や「マイクロ・アグレッション」「ナショナリズム」「ステレオタイプ」といった多様性を理解する上でのキーワードも要点を絞ってコンパクトに解説されており、理解をさらに深めてくれます。読めばきっと誰かと一緒にワークをしてみたくなる、そんな1冊です。

[著]有田佳代子、志賀玲子、渋谷実希(編著)/新井久容、新城直樹、山本冴里(著)
[出版社]研究社
[発行年月]2018年12月

ふたりのももたろう

私は、絵本をよく読みます。専門書のように明確な答えが書かれていない分、自分なりの解釈ができ、問いの立て方の参考にもなる気がします。タイトルとかわいらしい絵に引かれ、手に取ったこの絵本。実はじゃばら構造になっており、ページの表と裏で二つの物語がそれぞれ進行するユニークなつくりとなっています。誰もが1度は読んだことのある「ももたろう」。「もしも彼が鬼に育てられたら……?」。そんな問いから始まる本書。その出版社は、なんと戦略コンサルティングやベンチャー投資事業を軸にビジネスプロデュースを展開する「ドリームインキュベータ」。著者の木戸氏は同社の社員です。多様な価値観に気付くための情報を発信する社内プロジェクトから、異業種による絵本出版という夢を実現させました。この本が生まれた背景や著者の思いも想像しながら、最終ページの問いかけについて、皆さんなりの答えを考えていただければと思います。

[著]木戸優起(著)/キタハラケンタ(イラスト)
[出版社]ドリームインキュベータ
[発行年月]2021年8月

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