目の不自由な方と共に考えるコミュニケーションの大切さ

「川畠成道ニューイヤーコンサート」を通じて学んだボランティアの在り方

2019年1月26日、東京都千代田区の紀尾井ホールで「日本ユニシス・プレゼンツ 川畠成道ニューイヤーコンサート2019」が開催されました。日本ユニシスグループは、毎年このコンサートに目の不自由な方をご招待し、サポートが必要な方には、日本ユニシスグループ社員によるご自宅からコンサート会場までの移動サポートや、コンサート会場内でのご案内も行っています。今年も目の不自由な方を含め約700人の方に川畠さんの演奏を楽しんでいただきました。

目の不自由な方の気持ちを知り
正しい誘導の知識を身につける

コンサートに先立ち、日本ユニシス本社で目の不自由な方を誘導するための講習会を行いました。東京視覚障害者生活支援センター様にご協力いただき、視覚障がいに関する説明、障がい体験、誘導の実習を行いました。

目の不自由な方を誘導するための講習会。目の不自由な方をサポートするときは、まわりの状況を説明したり、どのようにサポートしたらよいかを確認したりするなど、コミュニケーションをとることが大切であることを学びました。
目の不自由な方の気持ちを知るためのアイマスク体験。写真は悪い誘導方法の例。左から、強く引っ張る、後ろから押す、その場に放置する。体験者からは「体験を通じてさまざまな気づきがありました」「声をかけ、確認することが大切だと知りました」などの声がありました。
目の不自由な方の誘導実習。誘導の際の基本姿勢、椅子への誘導方法、階段での誘導方法など、誘導する側・される側を交代しながら学びました。階段の手前では必ず止まり、階段があることと、上り階段か下り階段かを伝えることが大事だということを教わりました。

コミュニケーションを楽しみながら
自宅から会場まで同行

そして迎えた1月26日、コンサートの当日です。ご招待者の田中さんご夫妻を誘導するのは河原優と鈴木摂子。河原にとっては初めての誘導経験です。

田中さんご夫妻をご自宅までお迎えに行き、そこから地下鉄・タクシーを乗り継いで紀尾井町のコンサートホールに向かいました。講習会で学んだことを生かし、コミュニケーションを楽しみながら移動し、トラブルなくコンサートホールまで案内することができました。コンサートホールに到着したら座席まで案内し、コンサートを共に楽しみます。休憩時間の誘導、コンサート終了後のご自宅までの同行で当日のサポートは終了です。

ご自宅から駅まで移動し、駅の改札を抜けて地下鉄に乗ります。
駅からタクシーに乗ってコンサートホールへ。座席までご案内し、共にコンサートを楽しみました。

コンサートに参加した田中さんご夫妻は感想を次のように語ってくださいました。

「川畠さんの演奏がすてきなので、コンサートには毎年参加しています。去年から日本ユニシスグループの方にサポートをお願いしていますが、皆さんが丁寧に誘導してくださるので不安なく移動でき、安心してコンサートを楽しむことができました」

今回も筑波大学附属視覚特別支援学校の皆さまをご招待
待望の演奏会参加に歓喜の声も

筑波大学附属視覚特別支援学校
音楽科主任 教諭(声楽)
小野山幸夏さん

筑波大学附属視覚特別支援学校音楽科は学校創立当初から約140年の歴史を持ち、全国でも数少ない視覚に障がいのある方の音楽専門教育機関として、優れた環境の下、音楽の基礎から専門まで幅広く丁寧な指導を行っています。現在、高等部音楽科で4人、さらにその上級課程である専攻科音楽科で3人の計7人の生徒が学んでいます。

同校の音楽科主任教諭(声楽)の小野山幸夏さんに、筑波大学附属視覚特別支援学校と川畠成道ニューイヤーコンサートとの関わりをお伺いしました。

「音楽を学びたいという高い志を持った生徒たちにチャンスを与えることが本校の使命です。一人ひとりの個性を尊重し、音楽を通じて社会に貢献するために必要な知識、技能、態度、習慣を身につけるとともに、感性を磨き、広い視野に立った社会の一員に成長するよう支援します。

『日本ユニシス・プレゼンツ 川畠成道ニューイヤーコンサート』には10年ほど前からお招きいただいています。2019年も2人の生徒と引率の教員が参加しました。本当はもう少し多くの生徒が申し込んでいたのですが、インフルエンザにかかって参加できなくなってしまいました。2人の生徒は今回が初めての参加で、『待ちに待った川畠さんの演奏をついに聴ける』と大喜びでした。
川畠さんは生徒たちにとっての大スター。大きな目標として、いつか自分も川畠さんのような演奏家になれたらという夢を抱き、日々音楽を勉強しています。そこから勇気が湧いてきますし、たとえプロの演奏家になれなかったとしても、音楽を愛する者として一人ひとりの人生に大きなプラスとなります」と小野山さんは話します。

生の演奏会だからこそ
学べることがたくさんある

続けて、コンサートで生徒が得られる“学び”について小野山さんに語っていただきました。

「生徒たちには、できるだけ多くの演奏会に出かけるよう勧めています。著名な音楽家の演奏を聴くだけならCDや動画サイトなどでも可能ですが、生の演奏会に足を運ばなければ学べないことがたくさんあります。例えばステージ上でのマナーもその1つです。生徒たちも音楽を専門に学んでいる者である以上、いざステージに立ったならば、演奏者として恥ずかしくない立ち居振る舞いをしなければなりません。たとえ目は見えなくても、プロの演奏家がお客さまの前でどのように振る舞っているのか、ささいな動作やしぐさも“空気感”としてしっかり伝わってきます。

しかしながら生徒にとって、演奏会に出かけるにはいくつものハードルがあるのも事実です。一般的に演奏会のチケットは高額になるため経済的な負担が大きいこと、コンサート会場に行くまではもちろんですが、会場内での移動も大変です。

その意味でも川畠さんのニューイヤーコンサートに毎年ご招待をいただけるのは、本当にありがたいことです。日本ユニシスグループのボランティアの皆さまに手厚いサポートの体制も整えていただいており、とても感謝しています」

目の不自由な方とボランティアが
お互いのことを学ぶ場に

川畠さんのニューイヤーコンサートは回を重ねるごとに、同校の生徒さんと日本ユニシスグループのボランティアの相互理解が深まってきています。

目の不自由な方をサポートする際に、ともすればボランティア側には「助けてあげなければ」という意識が過剰に働いてしまい、どこに行くにも付き添って案内してしまうことがあります。

それに対して、小野山さんは、目の不自由な方とサポートする側との関わりについて次のように語ってくださいました。

「すべての目の不自由な方や特別支援学校の生徒に当てはまるわけではありませんが、生徒が『大丈夫』と言っていたのなら、本人に任せていただいて構いません。生徒は、それぞれ自分の感覚で会場内を歩いて確認し、例えば『この階段を下りて廊下を左に10メートル進めばトイレがある』といった位置関係を頭の中に描きます。強引に案内されてしまうと、こうした頭の中の『地図づくり』ができなくなってしまうのです。場合によっては途中で道を間違ったり、つまずいたりすることもありますが、それも生徒たちにとっては大事なプロセスなのです。

一方で本当に困ったときには、ボランティアの皆さまに何を手伝ってほしいのかを的確に伝えるように生徒たちに指導しています。コミュニケーション力を高めることが、生きる力をアップすることにつながります」

こうした積み重ねを経て現在は、「ほどよい距離感」を保ったサポートができるようになってきました。目の不自由な方とボランティアがお互いに相手の立場になって考え、尊重し合う――。川畠さんのニューイヤーコンサートは、そんな体験を通じてしか得られない学びの場にもなっているのです。

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