未来も強くあり続けるために、すでに2024年を見据えている

全日本実業団バド選手権大会好成績の陰で指導者たちが見いだした課題とは

2018年6月に開催された「第68回全日本実業団バドミントン選手権大会」で、日本ユニシス実業団バドミントン部女子チームが2年連続5度目の優勝、男子チームは準優勝と好成績を収めた。女子チームの小宮山元監督と平山優コーチ、男子チームの清水文武コーチが、国内最大級の団体戦を振り返りながら、今後の展望を語った。

勝って当然と見られるだけに
大きな重圧がのしかかる

日本ユニシス実業団バドミントン部
女子チーム 監督
小宮山 元

男女合計で21人の選手が所属し、そのうち15人をナショナルチームに送り出す日本ユニシス実業団バドミントン部。「日ごろ、不自由なくバドミントンに打ち込める環境を提供してもらっている会社に恩返しができる、という意味で非常に重要度の高い試合」と女子チームの小宮山監督は全日本実業団バドミントン選手権大会を位置づける。

バドミントン団体戦の国際大会は年に1回国別対抗戦が行われているが、企業名を背負うことは日の丸を背負うのとは一味違うプレッシャーがある。「国別対抗戦などに選手を送り出すときは、ただ『思い切ってやってこい』と言えるのですが、国内大会では社名に加えて『勝って当然』という重圧ものしかかってきます」(小宮山監督)

実業団選手権は2複3単。ダブルス2試合から始まり、その後シングルス3試合の計5試合で行われる。決勝リーグでは、どちらか一方のチームが3勝した時点で勝敗が決まる。ところが、男子チームは事前の調整時点で、シングルスの選手5人中3人のけが人を出してしまっていた。決勝のトナミ運輸戦では、ダブルスを1つ落とし、シングルスでの2勝が必須となったシーンで2敗。3-1で敗退し準優勝となった。

清水コーチは、「厳しいが戦える状態ではありました。敗因は練習不足」と分析。フィジカルが強いトナミ運輸チームに対して、「選手たちの技術面での特長を生かしきることができませんでした」と悔恨をにじませる。

一方、女子チームは、安定の3強であるダブルスの髙橋礼華・松友美佐紀ペア、シングルスの髙橋沙也加、奥原希望が、全員ほぼベストな状態で迎えることができた初めての団体戦だった。これまでは、3強のうち誰かしらを欠きつつも、その穴を若手が埋めてチーム力で勝ち続けていたのだ。「それだけにいつも以上に勝たなければならない、というプレッシャーがありました」と平山コーチは語る。

喫緊の課題は若手の育成だが
強豪チームならではの難しさも

チームの指導者たちは、今年の実業団選手権は「『若手の育成』という課題に直面した大会」と口をそろえる。女子チームは、選手がそろっていることを好機と捉え、あえて若手を多く起用した。しかし、結局、若手をベテランがカバーした形になった。「実は『勝った』とはあまり思っていません」と小宮山監督の優勝に対する評価は辛口だ。

日本ユニシス実業団バドミントン部
男子チーム コーチ
清水 文武

2016年に開催されたリオデジャネイロオリンピックでは、日本代表選手9人中7人が日本ユニシスチームから輩出された。2020年の東京大会でも「できるだけ多くの選手を送り出したい」(清水コーチ)と意欲は高い。

しかし、小宮山監督は「2020年はもちろん大きな目標ですが、2024年を視野に入れて指導にあたっています。現在の主力選手たちが抜けたあと、チームとしてトップのポジションをすんなり譲るわけにはいかない。そのためにも、若手の育成は喫緊の課題です」と話す。実際に、代表入りをターゲットにしている選手は、この4年間ほぼ変わっていない。

どう若手を育てるのかは大きな課題だが、強豪チームならではの事情もある。選手の多くがナショナルチームに行ってしまって、選手が残っていないことだ。ダブルスが組めないということすらあって、残っている選手のモチベーションをつなぎとめるのも難しい。

一方、ナショナルチームにはサポートコーチを帯同させて、選手をフォローする体制も取らなければならない。清水コーチは「サポートコーチとして精神的に支えていくことも大事な役割です」と話す。

各自のスタイルを尊重した
選手の多様性がチーム力に

日本ユニシス実業団バドミントン部
女子チーム コーチ
平山 優

日本ユニシスチームの練習の特色は個々のスタイルを尊重する姿勢にある。チームの練習を「不思議な光景」と、平山コーチは表現する。ハイテンションで元気に練習したい選手もいれば、静かに集中したい選手もいる。

平山コーチは「指導者が常に主導するスタイルでは、選手たちが皆似たようなプレーにまとまってしまう」と指摘する。選手自身が持つ課題意識に寄り添いながら、それぞれに必要な練習メニューを組む。選手とは日常的にコミュニケーションを取るほか、基本的に年に2回、1対1での面談を設けている。

試合でも個性を生かし伸びしろを引き出すための工夫をしている。コンビネーションが重視されるダブルスのペアも「なるべく固定したくない」(小宮山監督)という。実際、今回の実業団選手権でも、決勝戦までに出場したダブルスの8ペアで、全く同じ組み合わせで出場したペアは、準決勝、決勝の第2ゲームに出場した栗原文音・篠谷菜留ペアのみだ。

「ペアを固定しないことで、パートナーに合わせて守備範囲が変化します。そのとき組んだパートナー同士で、互いのプレーから学び合うこともできます。そして、誰と組んでも形をつくれるようになれば、選手もチームも強くなります」と小宮山監督。若手育成のための実践的な手法でもあるようだ。

バドミントンの面白さは、まずはそのスピードだ。男子であればよりダイナミックなパワープレーに魅かれるだろう。「その次は、シャトルを追うだけではなく、選手の動きに注目してもらいたい」と平山コーチは語る。プレーに表れる日本ユニシスの選手たちの個性に気が付いたら、ますますバドミントンが面白くなるに違いない。

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