映画『スタートアップ・ガールズ』プロデューサー&監督が語る制作秘話

日本初!“スタートアップ”がテーマの映画に込めた思いとは?

日本で初めてスタートアップをテーマとした映画、『スタートアップ・ガールズ』が、いよいよ全国の劇場で公開される。日本ユニシスも、この映画の制作に大いに協力してきた。協賛に至るエピソードも交えつつ、『スタートアップ・ガールズ』の企画段階から完成に至るまでのさまざまな“裏話”をご紹介しよう。

スタートアップをテーマに
日本の社会を盛り上げたい

スタートアップと聞いたとき、ある程度のビジネス感度をもった方々なら、それが「起業」や「新規事業の立ち上げ」を意味する言葉であることはすぐに分かるだろう。だが、一方でまだそれほど高い市民権を得た言葉ではないのも事実だ。

そんな「スタートアップ」をテーマとし、真正面からタイトルに掲げた映画が完成した。2019年9月6日(金)から全国の劇場で公開される『スタートアップ・ガールズ』である。自由奔放で天才的な発想力をもった大学生起業家の光(上白石萌音)と、無難で安定志向の大企業に勤めるOL希(山崎紘菜)という正反対の性格の2人の女性がビジネスパートナーとなって、起業を目指すというストーリーだ。

プロデュースしたのは、エグゼクティブ人材に特化した人材紹介会社Wahl & Case株式会社のCEO兼創業者であるケイシー・ウォール氏、株式会社日本ケーブルテレビジョン制作局制作部エグゼクティブプロデューサーの松橋祥司氏、株式会社白組シニアプロデューサーの亀山暢央氏の3人である。

Wahl & Case株式会社
CEO兼創業者
ケイシー・ウォール氏

最初に企画が立ち上がった2016年当時のことを、ウォール氏はこのように振り返る。

「2015年に『未来をつくる起業家~日本発スタートアップの失敗と成功 20ストーリー~』という書籍を出版し、多くの読者から『この本を読んで自分も起業しました』『挫折しかけていたけれど、もう少し頑張ろうという勇気が湧いてきました』といった声が寄せられました。イノベーションを起こす企業が誕生するためには、母数となるスタートアップの数を増やすことが必要です。日本でもより多くの人に新しい働き方の選択肢の一つとして起業にチャレンジしてほしいと願っていたので、これは非常にうれしい反響でした。そうした中から湧き上がってきたのが、『次はスタートアップをテーマにした日本初の映画をつくれば、もっと盛り上がるのではないか!?』という思いだったのです」

制作体制そのものがスタートアップ

ただ、ウォール氏自身にはこれまで映画を制作した経験がなかったため、まず映画プロデューサーの松橋氏に企画を持ち掛けた。さらに、そこに亀山氏も合流して3人はすぐに意気投合した。

株式会社日本ケーブルテレビジョン
制作局制作部エグゼクティブプロデューサー
松橋祥司氏

「私も日本の企業社会で生きてきた一人として、いまだに高度成長時代の古い考え方しか選択肢にない多くの企業組織に対して危機感をもっていました。そうした中にスタートアップをテーマとした映画を作って、社会に“刺激”を与えるメッセージを発信したいと考えました」と松橋氏は語る。こうして『スタートアップ・ガールズ』の実現に向けた動きが具体化していったのである。

面白いのは、この映画の制作体制だ。1本の映画の制作には多額の費用が必要となるため、通常は映画会社やテレビ局などに企画を持ちかけて、その配下で制作にあたる。あるいは「製作委員会方式」と呼ばれる複数の企業から資金を集める形をとる。

株式会社白組
シニアプロデューサー
亀山暢央氏

しかし、今回はそのどちらの方法もとらなかった。この映画を制作する事業会社(KM-WWORKS)を立ち上げ、賛同を示してくれた企業に出資や協賛を依頼したのである。「クリエイター主導で映画を事業として成り立たせていく、そんな新しいコンテンツビジネスの流れをつくりたかったのです」と亀山氏はその背景にあった思いを語る。まさに、『スタートアップ・ガールズ』の制作体制そのものが1つのスタートアップだったのである。

そして、これによってもたらされたのが、ウォール氏と日本ユニシスとの運命的な出会いだ。

自身のビジネス人脈を通じ、ウォール氏は日本ユニシスにこの映画の企画を真っ先に持ちかけた。スタートアップを積極的に支援している企業として聞き及んでいたからだ。「急な訪問だったにもかかわらず、平岡社長と直にお話しすることができ、すぐに協賛を決めてくださいました。私たちの取り組みを、最初の企画段階から信じてくれたのです。この協力がなければ、『スタートアップ・ガールズ』はこれほどまでにスムーズに軌道に乗らなかったかもしれません」と語る。

さらに日本ユニシスの支援は、資金面だけにとどまらなかった。本社ビルのオフィスの1フロアまるごと提供したほか、社員も情報提供やエキストラとして出演するなど、会社を挙げて全面協力したのである。

「映画のリアリティを追求するためには、オフィスで働いている人たちが、例えばどんな服を着て、どんな小物を持っていたりするのかなど細かいことを押さえておく必要があります。日本ユニシスの社員の皆さまと交流する中で、そうした多くのことを知ることができ、参考にさせていただきました」と亀山氏は語る。

また、松橋氏も「撮影を行ったのは2月の寒風が吹きすさぶ時期だったのですが、エキストラを務めてくださった社員の皆さまは、文句も言わずに屋外で何時間も待機してくださり、本当に感謝でいっぱいです」と振り返る。

リアルなエピソードを主人公2人の
キャラクターづくりに生かした

映画監督・脚本家
池田千尋氏

もっとも、スタートアップの意義を喚起するメッセージを社会に向けて発信することと、一般の人たちにも楽しんでもらえる純粋なエンターテインメントとしての面白い作品づくりはまったくの別だ。この2つの要素の絶妙なバランスをとりながら、『スタートアップ・ガールズ』の制作を担ってきたのが、監督を務めた池田千尋氏である。

そんな池田氏といえども、3人のプロデューサー陣から最初に企画を聞かされたときは、かなり面食らったようだ。「実は私自身が、スタートアップに関する知識をほとんど持ち合わせていなかったのです。急いで勉強しなければ、というドタバタからの始まりでした」と池田氏は明かす。

それでも前向きに監督を引き受けた理由は、女性を主人公としていたことにある。「起業という人生選択の裏側には、その言葉からイメージすること以上のドラマがきっとたくさんあるに違いないと思いました。起業には、自分が頂点に立って物事を動かしていく気概とパワーが必要です。同時にこの映画の主人公たちは自分が女性としてどう生きていくのかという悩みも抱えています。そんな葛藤も作品に織り込んでいきたいと思い、髙橋泉さんと共に脚本にも参加させていただきながら挑みました」

そうした中で苦心したのは、やはり、いかにしてストーリーにリアリティを持たせることができるのかという点だった。

「スタートアップをテーマとする以上、具体的にどんな起業を題材として描くのかが重要な鍵です。しかも、スタートアップを取り巻く世界はものすごいスピードで時流が変化するにもかかわらず、映画はクランクインしてから公開までにかなり時間が経ってしまいます。スタートアップについて少しでも知識や経験のある人が映画を観たとき、『古臭いアイデアだな』『こんなのありえない』などと思われては終わりです。そこで本作では医療や保育といった普遍的なテーマを設定しました。その上で主人公の光が卓越したアイデア力をもっていること、そしてもう一人の主人公の希が並外れた持久力をもっていることを違和感なく伝えるためのディティールにこだわりました。これがしっかりできていないと、映画はエンターテインメントとしての力も失ってしまうのです」

この過程で大変参考になったとして挙げるのが、日本ユニシスが提供している「ChiReaff Space(チャイリーフスペース)」という保育業務支援クラウドサービスだ。

実際に同サービスを立ち上げた日本ユニシスの社員にインタビューし、「なぜこの事業のアイデアを思い付いたのか」「会社をどうやって説得したのか」「どうやって仲間を増やしていったのか」などをつぶさに聞いた。「その会話を通じて得られた感動や驚き、共感の数々が、光と希という2人の女性のキャラクターづくりに生かされており、ストーリーにもふんだんに盛り込まれています」と池田氏は力説する。

徹底的にリアリティにこだわったからこそ、出来上がった作品は面白いのだ。さて、実際にどんな感動や発見をこの映画から得られるのか――。スタートアップに関心をお持ちの方も、そうでない人も、ぜひ劇場に足を運んでいただきたい。

志を持ってチャレンジするすべての人へ
日本ユニシス株式会社 代表取締役社長 平岡昭良

この映画の協賛のお話をいただいたのは、ちょうど私が社長に就任した年、まさにスタートアップとの連携をさらに加速させていこうという時期でした。

日本ユニシスグループの風土を丸ごと「変革」しようと悪戦苦闘している中でしたが、「新しいやり方で映画を作ろう」「映画というコンテンツを通じ、日本の起業家を応援しよう」という志に共感し、すぐに協賛を決めました。

「無理だと思った瞬間、人はその思考に負ける!」――起業を目指す人だけでなく、志を持ってチャレンジするすべての人に勇気を与える作品になっています(私も映画を見ながら心が震えました)。

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