情熱を原動力に! 日本ユニシスとユーグレナが描く未来創造のビジョン

社会問題解決に向けたスタートアップとの協業の在り方とは

画像:TOP画像(対談者写真)

循環型の社会づくりに向け、「微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)」の潜在能力に可能性を確信し、挑戦を続ける株式会社ユーグレナ。同社と日本ユニシスとの協業は2014年にスタートし、「石垣島ユーグレナ」の生産量予測などの共同研究を続け、大きな成果を上げている。ユーグレナ設立は2005年のことだ。代表取締役社長である出雲充氏は、学生時代に栄養失調に苦しむバングラデシュの人々を目の当たりにし、その解決に役立つ食材を探して「微細藻類ユーグレナ」に出合った。「社会問題を解決し、持続可能な社会の実現に向けてその可能性を追求したい」。こうした強い思いが、同社躍進の原動力となっている。本稿では、未来を担う学生層も多く参加したウェビナーにおいて、出雲氏と日本ユニシス代表取締役専務執行役員 CMO・COOの齊藤昇が交わした、これからのスタートアップの役割や未来展望などについてお伝えしたい。

“志”でつながった
「日本ユニシスとユーグレナ」の協業

齊藤 ユーグレナは「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」というユーグレナ・フィロソフィーを掲げ、持続可能な地球にすべくさまざまな活動を続けています。まず、創業者である出雲さんから起業の経緯をお聞きしたいと思います。

出雲 きっかけは、大学1年生の夏休みのときに訪れたバングラデシュでの体験です。バングラデシュでは、世界的に有名なグラミン銀行のインターンシップに参加しました。同行は、マイクロファイナンスを発案し、貧しい人たちに対して無担保で数万円程度の少額融資を行っています(参考:グラミン日本)。借り手は、小さな事業を始めて生活基盤の確立を図りながらお金を返します。この中で、貧困から抜け出した人が何百万人もいます。その素晴らしさを肌で感じ、心動かされ、「自分も社会問題を解決するビジネス、ソーシャルビジネスがしたい!」と思ったのです。

齊藤 社会問題もいろいろありますが、「微細藻類ユーグレナ」に行き着いた理由はどのようなものですか。

出雲 バングラデシュ体験でもう一つ大きな衝撃を受けたのは、栄養の偏った食事でした。栄養失調に苦しむ子どもたちが本当に多かった。帰国後に栄養の勉強を始め、そこで「微細藻類ユーグレナ」に出合いました。藻類であるユーグレナには、人間生活に必要な59種の栄養があります。この点では申し分ありません。ただ、増やそうとすると、栄養豊富であるがゆえに他の細菌などがすぐに食べてしまうため、大量に培養することが難しい、と専門書にも書いてありました。それでも可能性を信じ、私はこのテーマに挑戦しようと決めました(参考:ユーグレナプロジェクトvol.00)。研究者をはじめ、全国の多くのみなさんにサポートをしていただき、培養できるようになったのが2005年12月です。

画像:ウェビナー風景(1)
2020年7月15日に実施されたウェビナーの一幕(1)

齊藤 最初に出雲さんから話を聞いたとき、とても感動したことを覚えています。日本ユニシスとユーグレナとの出合いは2014年でしたね。

出雲 お互いへの共感がベースにあるからだと感じます。とてもいい形でコラボレーションができていると思います。ただ、日本ユニシスという大企業と、私たちのようなスタートアップという異質な組み合わせを不思議に思う方もいるかもしれません。

写真:株式会社ユーグレナ代表取締役社長 出雲充氏
株式会社ユーグレナ
代表取締役社長 出雲充氏

齊藤 共通しているのは、「社会課題を解決したい」という思いですね。社会課題に本気で向き合おうとすると、日本ユニシスだけの力では不十分です。私たちは志や情熱といったものを共有する多くの仲間と共に、ビジネスエコシステムを発展させて課題を解決したいと考えています。

IoTとAIの進化による
「微細藻類ユーグレナ」生産量予測精度の向上

齊藤 一例として、クリーンエネルギーへの取り組みを紹介しましょう。EV普及に向けて、2009年ごろから高速道路に充電サービスインフラの設置を進めてきました。2010年代に入ってからは、スマートなエネルギー管理を目指して「BEMSアグリゲータ事業(UNIBEMS)」をスタート。新電力事業者へのサービス事業や「VPP(Virtual Power Plant)」の実証実験なども行っています。さらに、2017年にはユーグレナとのコラボレーションが始まり、現在ではバイオ燃料用の「微細藻類ユーグレナ」培養、という分野で共同研究を続けています(参考:IoTとAIで夢のバイオ燃料の実用化を目指す)。この点については後で触れるとして、出雲さんには、まず「微細藻類ユーグレナ」のバイオ燃料に関するこれまでの取り組みを説明していただけますでしょうか。

出雲 バイオディーゼル燃料から説明しましょう。いすゞ自動車との協業で2014年に本格研究がスタートし、6年がかりで実用化にこぎつけました。2020年4月から同社藤沢工場のシャトルバス燃料として使われています。バイオディーゼル燃料開発は苦難の連続でした。しかし、それ以上に困難の連続だったのがバイオジェット燃料です。2008年に研究開発を始めて丸12年。2020年1月に、ようやく「ASTM International(旧・米国材料試験協会)」の定めるバイオジェット燃料に関する製造技術の国際規格で「微細藻類ユーグレナ」のバイオジェット燃料が認められました。これにより、従来型ジェット燃料と同様に民間航空機での使用が可能になりました。うれしいことに、それから1週間もたたないうちに、日本の国土交通省からも認定してもらうことができました。

齊藤 いよいよ、「微細藻類ユーグレナ」のバイオ燃料が現実のものになりますね。大きな期待を持っています。

出雲 新型コロナウイルス感染症の影響下で、多くの企業が苦境にありますが、将来を見据えたアフター・コロナの議論も盛んに行われています。欧州などでよく聞かれるキーワードが「グリーン・リカバリー」です。「縮小した経済活動を単に元通りに復活するのではなく、地球環境に配慮した形につくり変えよう」という考え方です。

写真:日本ユニシス株式会社 齊藤 昇
日本ユニシス株式会社
代表取締役専務執行役員 CMO・COO 兼
キャナルベンチャーズ株式会社 取締役
齊藤 昇

齊藤 グリーン・リカバリーの考え方が浸透すれば、「微細藻類ユーグレナ」のバイオ燃料の役割はより大きなものになりそうですね。日本ユニシスとの「微細藻類ユーグレナ」培養に関する取り組みについてもお話しいただけますでしょうか。

出雲 日本ユニシスとのコラボレーションは、2014年に始まりました。そして、この中で2018年にスタートしたのがバイオ燃料用「微細藻類ユーグレナ」の生産量予測です。私自身、当初は半信半疑でした。学生時代、作物の収穫量予測に取り組んだことがあるのですが、ほとんど当てにならなかったからです。その頃は「予測なんて意味がない」と思っていましたが、ここ数年の日本ユニシスとのプロジェクトを通じてその認識は大きく変わりました。かなり高い精度で、「微細藻類ユーグレナ」の生産量を予測できると分かったのです。高度予測が可能になった背景には、「IoT」と「AI」の2要素があります。IoTに関しては、主にセンサーの発達が挙げられます。藻類であるユーグレナを培養するプールは、水温や日射量の数値管理が重要です。これらは当然ですが、プールの水にどんな物質がどの程度溶けているかなどのデータまでセンサーによって把握できます。これらのビッグデータを日本ユニシスの「IoTビジネスプラットフォーム」で収集・分析し、併せて「Rinza」のAI技術も活用することで、予測精度を高めることができました。

齊藤 IoTとAIという当社の得意な技術でユーグレナの夢やビジョンの実現に役立てたこと、共に未来を創ろうとしていることは、私たちにとってもうれしいことです。今後、さらなる精度向上はもちろん、培養工程管理の効率化や高度化に向けて手を携えていきたいと思っています。

「未来を担う若者の声を変革の力に」
高校生“CFO”が誕生

齊藤 先ほど、アフター・コロナの社会を「地球環境に配慮した形につくり変えよう」という話がありました。とても共感するメッセージです。その実現のためにもユーグレナのようなスタートアップの役割は大きいと思います。日本ユニシスではCVC(Corporate Venture Capital)活動をはじめ、さまざまな形でスタートアップとの関係強化を図っています。その例として、経団連が2019年5月に立ち上げたスタートアップ委員会があります。出雲さんは委員長の1人で、スタートアップ政策タスクフォースの座長でもあります。私も同委員会の企画部会で部会長を務めており、大企業とスタートアップとの協力関係の重要性を強く認識しています。しかし、「海外に比べると日本ではスタートアップがなかなか育たない」との声もあります。

出雲 大きな課題だと思います。日本経済は、平成時代の30年間、長期停滞を経験しました。「IMD(International Institute for Management Development)」の競争力ランキング(2020年版)によると1990年前後に1位だった日本の順位は、2019年に30位、2020年には34位に転落しました。1人当たりの労働生産性でも、日本はOECD平均を2割近く下回ります。また、IMDリポートの小項目を見て、特に危機感を覚えるのが「アントレプレナーシップ」と「デジタル技術のスキル」の分野です。それぞれ63位、62位。調査対象63の国・地域の中で、です。状況は厳しいですが、その原因は明確です。「やるべきことが分かっている」とも言える。だから私は悲観していません。これら2つの分野でやるべきことをやり、大きく順位を上げれば競争力は高まります。

齊藤 デジタルについては、IT関連企業の責任も大きいと感じます。厳しい評価をきちんと受け止めた上で、お客さまやパートナーと共にDX(デジタル・トランスフォーメーション)への取り組みを加速していきたいと思っています。アントレプレナーシップについては、私も悲観していません。なぜなら、起業家をはじめスタートアップの若い人たちと接する中で、志の高さと情熱に圧倒される経験を何度もしてきたからです。そうした若者たちと一緒に汗を流しながら、未来を切り拓いていきたいと考えています。

出雲 未来の日本をつくるのは若者ですからね。

齊藤 ユーグレナは18歳以下の条件で「CFO(Chief Future Officer:最高未来責任者)」を募集し、実際に高校生が就任したそうですね。このニュースにも驚かされました。

画像:ウェビナー風景(2)
2020年7月15日に実施されたウェビナーの一幕(2)

出雲 若者の声を聞き、積極的にその意見を取り入れていかなければ、10~20年後に彼ら彼女らが社会の中心となったとき、企業が顧客や市場から選ばれ続けるのは難しいと思います。私たちが生き残るためには、今行動を起こす必要があると考えてCFOを公募しました。小学生から高校生まで500人を超える応募があり、小澤杏子さんという高校生をCFOに任命しました。小澤CFOからは、既存のペットボトル商品撤廃という具体策を含む、当社製品における石油由来プラスチック半減への提案がありました。当社役員会はこの提案を受け入れ、現在、会社全体でこの方向に向かって進んでいます(参考:CFOの考える経営改革)。

齊藤 素晴らしいですね。日本ユニシスとしても、若者との接点をもっと工夫する必要がありそうです。最後に、出雲さんからメッセージをいただけませんでしょうか。

出雲 私がこの先命を懸けて、ユーグレナの仲間たちと共に取り組んでいきたいのは、SDGsで掲げられている目標のうち、Goal 1「貧困をなくそう」、そしてGoal 13「気候変動への具体的な対策を」です。ただ、残り15もある目標は私たちだけでは到底解決できません。そこで経営層をはじめとするビジネスパーソンに対しては、「若者にチャンスを与えてください」と伝えたい。デジタルネイティブ世代に思い切って任せることで、イノベーションが生まれるかもしれません。失敗に備えたリスクマネジメントは必要ですが、若者のエネルギーや可能性をもっと信じてほしい。若者に向けては「もっと勉強しよう!」というメッセージを届けたい。「これについてもっと知りたい、学びたい」という情熱の源さえつかめば、誰かに言われなくても、人間は勝手に勉強するものです。できれば学生のうちに、私にとっての“ユーグレナ”のような、夢中になれるテーマを見つけてほしいと思います。

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