JR西日本、大量に押し寄せる災害情報を一元化・共有化へ

「災害ネット」で的確な意思決定と初動対応の迅速化を目指す

鉄道の運行に支障を来す災害が起こった場合、JR西日本の本社には早急に対策本部が立ち上げられ、大量の情報が寄せられる。しかし、関係箇所から伝えられるそれらの情報は錯綜しがちである。同社はこの課題を解決すべく、日本ユニシスのクロノロジー型危機管理情報共有システム「災害ネット」を導入。各所の情報をリアルタイムに一元化することで、指揮官となる役員の的確な意思決定を支える。

災害時の初動のミスリードは対策や復旧の遅れを招く

JR西日本は総延長距離4900.6km、東は新潟県から西は福岡県まで2府16県に及ぶ広大な地域に鉄道事業を展開している。さらに近年では、大阪駅北地区の「うめきたエリア」の再開発プロジェクトをはじめとする、駅と周辺地域を一体的に捉えたまちづくりへの貢献、増加の一途をたどる訪日外国人観光客の「受け入れ態勢の充実」「広域観光ルートの開発と整備」「プロモーション強化」を柱としたインバウンド対応の強化などでも、大きな存在感を発揮してきた。

ただ、そんなJR西日本にとっても喫緊の対応強化が求められている経営課題がある。それは他でもない災害対策だ。JR西日本の企業倫理・リスク統括部 担当課長、新美琢也氏は、次のように話す。

西日本旅客鉄道株式会社
企業倫理・リスク統括部 担当課長
新美琢也氏

「鉄道の運行に支障を来すような災害が起こった場合、早急に本社内に対策本部が立ち上げられ、車両、施設、電気、営業、運輸など、さまざまな関係箇所から情報が集まってきます。しかし、各班から矢継ぎ早に寄せられるそれらの情報は錯綜しがちで、正確に集約・把握することには非常に困難が伴うのが現実です。全体を指揮する役員が正しい情報に基づいて迅速な意思決定を行えないと、初動をミスリードすることにもなりかねず、そのぶん対策や復旧が遅れてしまう恐れがあります」

実際、2017年11月には役員を加えた机上訓練が実施されたが、やはり少なからず混乱が発生するなど、多くの課題が浮き彫りになったという。また、2018年度に入るとJR西日本の営業エリアには、大阪府北部地震(6月18日)、西日本豪雨(7月6日)、台風21号(9月4日)など、次々と大きな災害が起こり、同社の経営陣の間に危機感が高まっている。

情報流通の時間と労力をシンプルな仕組みで大幅削減

そもそもなぜ対策本部において情報が錯綜してしまうのか。JR西日本 企業倫理・リスク統括部の小野梓氏は、以下のように説明する。

「災害が起こると対策本部の各班は、時々刻々と発生する被害や障害、その対応状況をホワイトボードに書き込んでいくのですが、そうしたアナログ情報を関係者全員でリアルタイムに共有することはできません。従来の方法では情報の時系列が入り乱れるため、真偽やプライオリティーを判断できないために、対策本部が混乱に陥ることもあります」

西日本旅客鉄道株式会社
企業倫理・リスク統括部
小野 梓氏

そして、この課題解決を探る中で出合ったのが、日本ユニシスのクロノロジー型危機管理情報共有システム「災害ネット」だ。ホワイトボードに記録するのと同じような要領で、PCやスマートフォン、タブレットから、起こっている事象を入力していくだけで情報を他班と素早く共有できる、災害発生時の社内の情報共有ツールだ。

このシンプルな仕組みにより、情報の流通(伝達・とりまとめ・共有)にかかる時間と労力を大きく削ることができる。

「2017年に情報収集のために訪れた『危機管理産業展(RISCON TOKYO)』で運よく災害ネットを見かけ、『これは使えそうだ』と皆の意見が一致。同様の機能を持ったソリューションは他にはなく、導入を決定しました」と新美氏は語る。

最も高く評価したポイントは「圧倒的な使いやすさ」だ。「いざ対策本部を立ち上げるとなれば、関係箇所のさまざまな社員が一人の漏れもなく連動することが求められます。そうした中で私たち事務局側のメンバーはさておき、ITの得意な人しか使えないようなツールでは役に立ちません。これまでホワイトボードを使っていた各班のメンバーが、いかに違和感を持つことなくスムーズに移行できるか、かつ継続的に使いこなしていけるかが重要なのです」と小野氏は強調する。

実施予定の机上訓練で災害ネットの効果を実証

2018年8月に災害ネットを正式導入したJR西日本は、企業倫理・リスク統括部の事務局メンバーおよび安全推進部が中心となりテストを行っているところだ。

そして同年11月に実施する災害対策の机上訓練において、その情報共有基盤としていよいよ災害ネットを本格的に活用する予定となっており、日本ユニシスの協力を得ながら一般社員に対する操作研修を行うなど、入念な準備を進めている。

新美氏は「この訓練が災害ネットの効果を実証する最初の試金石となります」と語り、「昨年までの訓練で明らかになってきたさまざまな混乱や課題を確実に解消し、情報の一元化による迅速な意思決定と指揮命令の体制を確立したいと思います」と、皆が納得し得る定量的な効果を示していく考えだ。

さらにその先では、より広範な災害対策やリスク管理業務に災害ネットの活用の幅を広げていくという構想を描いている。「現時点で災害ネットの活用を想定している災害は地震のみですが、台風や豪雨・豪雪などその他の大規模災害の対策にも活用できるかもしれません」と新美氏は語る。

小野氏も「災害ネットは設定を変更できる余地が非常に大きく、例えば施設や設備に関する情報を新たな項目に加えたいといった場合でも柔軟に対応することができます。その意味でも今後検証を重ねれば、より多様な業務へ応用できる可能性も十分にあるでしょう」と前向きだ。

何はともあれ今後の訓練を通じてユーザー層を広げ、現場定着への土台を築くことが次の展開につながる。JR西日本は着実なステップを刻んでいる。

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