独自のノウハウを生かし新しいビジネスモデルづくりを目指すJCB

決済や個人データの環境変化を受け、社会に必要なモデルづくりに着手

クレジットカード、電子マネー、QR/バーコードなどを活用するキャッシュレス決済の利用が広がっている。インターネットを介して顧客と直接つながる新たなペイメントプレーヤーの登場は、個人データ利活用の在り方にも大きな影響を与える可能性がある。今後、社会に必要とされる決済の仕組みやその個人のデジタルアイデンティティーのモデルはどうあるべきか。国際ブランドカード会社、ジェーシービーの取り組みを解説した。

日本に押し寄せる
キャッシュレス化の波

世界に比べて遅れているといわれる日本のキャッシュレス化。近年はアジアを中心に急速に拡大したQR/バーコードを活用したキャッシュレス決済サービスの波が日本にも押し寄せるなど、従来のクレジットカードとは異なる新しい支払サービスが広がっている。

株式会社ジェーシービー
イノベーション統括部長
久保寺晋也氏

このような決済を取り巻くビジネス環境が大きく変化する中、株式会社ジェーシービー(以下、JCB)のイノベーション統括部長、久保寺晋也氏は「当社ではQR/バーコード決済の共通基盤であるSmart Codeを提唱するとともに、さまざまな決済方法をカバーするソリューションを用意し、利用者や事業者の多様なニーズに応えています」とモバイル決済の取り組みを語った。

キャッシュレス決済の中でも、QR/バーコード決済に関心を寄せる事業者が少なくないという点に触れ、その背景を久保寺氏は次のように述べる。「ITの進展を背景に、顧客ニーズに合わせて『いいとこ取り』が可能な環境が整いつつあります。グローバルで見ると、これまでの金融機関のネットワークを代替するような動きも見受けられます」

その一例として、中国のスマホ決済アプリ「WeChat Pay(ウィーチャットペイ)」や「Alipay(アリペイ)」などを運営する新たなペイメントプレーヤーのビジネスモデルを挙げる。これらの決済アプリはインターネットを介して顧客と直接つながることで、国際的なクレジットカードブランドを保有するカード会社などが果たしてきた決済の役割を迂回する事象が起こっているという。

重要になる分散型IDと
自己主権型IDの考え方

そして、久保寺氏はこう指摘する。「迂回と同時並行的に起こっている事象として気になるのが、加盟店の手数料を低減する動きです。その結果、手数料で収益を上げていた従来のカード会社のビジネスモデルが破壊されるおそれもあります」

だが、スマホ決済を運営するペイメントプレーヤーは、決済事業で利益を上げようとは考えていないようだ。決済アプリを利用した個人のデータをグループのさまざまな事業で共有することにより、利益を上げる仕組みづくりを進めているという。

こうした動きについて、久保寺氏は「新たに決済事業に参入する事業者は、利用者のさまざまなデータを取得、連携することで新たなビジネスモデルを考える。つまり、個人データと各種サービスの連携がますます重要になっているのです」と話す。

その一方、本人の知らないところで個人データが収集され、流通することに違和感を持つ人は多い。いわゆるGAFAなど巨大IT企業(プラットフォーマー)の個人データ利活用に対し、欧州の一般データ保護規則(GDPR)のように法制面で規制しようとする動きもある。

個人データ、アイデンティティーに関する情報の活用で大きな力を持つプラットフォーマーやペイメントプレーヤーに対して、個人や企業はどう対抗するか。その方法として、「分散型アイデンティティー(DID:Decentralized IDentity)」と「自己主権型アイデンティティー(SSI:Self-Sovereign Identity)」の考え方が紹介された。

例えば、金融機関の窓口で本人確認を行う際、自分の意志で免許証などを提示する。このようにリアルの世界では自分の情報を提供する際、自分で管理している情報を自分の意志で提供する。これをオンラインの世界で実現するのが、DID/SSIの考え方だという。

出典:株式会社ジェーシービーの資料を基に作成

個人が複数の企業に対して自身の情報連携を許可する場合、個人が管理主体となるので自己主権型となる。そして、企業は個人に許可された範囲で情報を他社と連携してサービスを提供する。「特定の企業に情報を集約するのでなく、企業が分散して情報を保有し、必要に応じて連携するので分散型になります。これらは単なる概念ではなく、エストニアの電子政府などDID/SSIに近い考え方を実現している例もあります」(久保寺氏)

国際ブランドとして培ってきた
スキーム運営機能を基盤に活用

久保氏は講演の後半、ポスト国際ブランドビジネスを見据えた決済領域や自己主権や連携をキーワードにしたアイデンティティー領域を踏まえ、社会に必要とされるモデルづくりに向けたJCBの取り組みを紹介した。

例えば、JCBが保有する決済基盤や認証機能を活用しつつ、企業が保有する顧客データなどさまざまな情報を連携する「ID・認証基盤」を新たに構築するという。

出典:株式会社ジェーシービーの資料を基に作成

その際、「国際ブランドとして培ってきた事業者間のルール設定や資金精算などのスキーム運営機能を転用できると見ています。それにより、企業はそれぞれのIDを管理し、分散された状態を維持したまま、基盤を通じて相互連携が行えるようになります」とID・認証基盤を軸とした新たなビジネスモデルの意義を説く。

その実現に向け、顧客ニーズの的確な把握や基礎的な技術の研究・開発、パートナー企業との協業が必要になるという。久保寺氏は「こうした活動を通じ、顧客ニーズに応える真の社会インフラ企業へと進化していきます」と力強く訴え、講演を締めくくった。

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