IoTを安心して利用できる環境づくりを目指す

セキュアなIoTビジネスプラットフォームで新たな顧客価値を創出

IoTを活用してデジタル変革を進める企業が増えている。国内外でさまざまな導入事例が報告される一方、膨大なIoTデータを取り扱う際のセキュリティやエッジ処理、デバイス管理などの課題も見えてきた。社会インフラとなるIoTを安心してビジネス利用できる環境づくりに向け、日本ユニシスとマイクロソフトの両社は企業にどんな解決策と価値を提示しようとしているのか。その取り組みを紹介する。

IoT特有の脆弱性が顕在化

IoTの利用拡大やセンシング技術の進化などを背景に、IoTを取り巻く環境が変化している。IoTデバイスはこれまでのカメラやセンサーに加え、ウェアラブル、ロボティクスなど多種多様なデバイスがネットワークに接続されるようになってきた。

また、IoTデバイスとエッジ、クラウドを結ぶネットワークの通信規格もWi-FiやLTE、インターネットのほかに、超高速の第5世代移動通信システム(5G)、IoT向けのLTE規格であるNB-IoTなど多様化している。IoTデータを収集・分析するクラウド環境についても、IaaSやPaaS、SaaSなどIoTの利活用を支援するサービス提供やデータ保護などの取り組みが進んでいる。

日本ユニシス株式会社
新事業創出部長
森口秀樹

そして、IoT特有の脆弱性も顕在化している。IoTデバイスは長期間使用されることや、人目に付きにくい場所に設置されることも多く、異変や攻撃に気が付きにくいという問題がある。IoTの脆弱性を狙ったサイバー攻撃も報告されており、IoTのセキュリティリスクが高まっている。

こうした状況について、日本ユニシス 新事業創出部長の森口秀樹は「IoTの脆弱性管理は、もはや個別の企業では手に負えない事態に発展しつつあります。IoTデバイスを扱う現場でセキュアな状態を維持しつつ、セキュリティ対策に取り組むクラウドを活用するといった視点が企業に求められています」と指摘する。

IoTの新たなセキュリティ対策を提示

IoTビジネスで日本ユニシスとマイクロソフトは強力なパートナーシップを築いてきた。マイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure」をベースに、日本ユニシスグループが「IoTビジネスプラットフォーム」を提供していることも、その一例だ。

日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員
IoTデバイス本部長
菖蒲谷雄氏

マイクロソフトではIoTのセキュリティにどう取り組んでいるのだろうか。日本マイクロソフト 業務執行役員 IoTデバイス本部長の菖蒲谷雄氏は、次のように話す。「IoTのセキュリティを守る新たなソリューションとして『Azure Sphere』を発表しました。IoTデバイスに組み込まれるチップのMCU(マイクロコントローラーユニット)、IoTセキュリティ向けに構築されたカスタムOS、デバイスを保護するクラウドセキュリティサービスが三位一体となり、高度なセキュリティを実現します」

MCUはマイクロソフトとチップベンダーが共同開発したもので、MCUを使用したIoTデバイスは家電製品や産業機械などさまざまな分野で利用されている。マイクロソフトのセキュリティ技術を搭載した「Azure Sphere MCU」、セキュアなカスタムOS「Azure Sphere OS」、デバイス間やデバイスとクラウド間の通信を保護する「Azure Sphere Security Service」の3つの要素でAzure Sphereは構成される。

出典:日本マイクロソフト株式会社

例えば、家電メーカーがインターネットにつながる「コネクテッド冷蔵庫」を販売する場合、IoTデバイスにMCUを組み込むことにより、「冷蔵庫のコンプレッサーの異常を遠隔から検知することができます。さらに冷蔵庫をセキュアに使い続けるためにクラウドからセキュリティOSのアップデートサービスを長期間にわたって提供するなど、家電メーカーは付加価値の高い家電製品の販売とサービスが可能です」と菖蒲谷氏はAzure Sphereの意義を話す。

IoTの用途に応じて
エッジとクラウドを使い分ける

こうした「付加価値を生むコネクテッド」の状況について、菖蒲谷氏はドイツ・ハノーバーで4月に開催された国際産業見本市「ハノーバーメッセ」にマイクロソフトが出展した模様を交えて説明する。

世界のIoTの潮流は連携・統合へと進んでおり、IoT製品だけでなく、周辺の情報も含めコネクテッドする動きが加速しているという。また、バリューチェーン全体を俯瞰したプラットフォームやエコシステムの展開や、最新テクノロジーの「Microsoft HoloLens」とMixed RealityをIoTに適用するなど技術の進化が目覚ましい。

「特徴的だったのは、用途に応じてクラウドとエッジをハイブリッドに使い分けることが当たり前になってきたことです」と菖蒲谷氏はハノーバーメッセを振り返る。IoTデバイスからデータを送信する際のネットワークの遅延やリアルタイムの制御、データのプライバシー保護などを考えると、クラウドよりエッジ側で処理したほうがよい場合もある。

一方、IoTデバイスの遠隔監視・管理やAIによる高度なデータ分析などのコンピューターパワーを考慮するとクラウドを活用したほうが有効だろう。菖蒲谷氏は、「エッジとクラウドを用途に応じて組み合わせて使えるよう、エッジ側の技術強化が進んでいます。こうした世界の動きを見ながら、日本企業もIoTのビジネス利用を進めていく必要があります」と指摘する。

出典:日本マイクロソフト株式会社

IoT・AI技術を活用し
働き方や生産性を改善

日本のIoTビジネスを大きく変える可能性を持つのが、日本ユニシスグループが注力する「アセットガーディアン」だ。アセットガーディアンは、日本ユニシスグループの中期経営計画「Foresight in sight 2020」の重点施策として注力領域の1つに位置づけられる。「社会公共インフラの老朽化や熟練技術者の減少などの社会課題に対し、IoT・AI技術を活用して労働者の働き方や生産性を大幅に改善します」と森口はアセットガーディアンの狙いを説明する。

例えば、社会課題として自然災害被害抑止や設備老朽化と安全対策、設備効率化対策などがある。こうしたさまざまな社会課題に対する解決策を「Foresightシナリオ」として定義。斜面モニタリングや公共インフラ監視、セキュリティ監視、設備機器メンテナンス効率化などのシナリオがある。そして、シナリオを実現するIoT・AI技術の活用を通じて社会に貢献する。

そのIoTサービスを支えるのが「IoTビジネスプラットフォーム」だ。まず、環境インフラ設備点検、ビル設備保全、生産設備・倉庫運営、店舗・施設運営にフォーカスしてサービスを提供する。

出典:日本ユニシス

森口は環境インフラ設備点検の事例を紹介した。老朽化が進むインフラの効率的な維持管理が課題になる中、日本ユニシスは日本海コンサルタントと共同でAIを使った構造物劣化診断の研究開発を行っている。これまで専門知識と経験のあるコンクリート診断士が目視で橋梁の劣化を点検、判定してきたが、点検する技術者不足や判定まで時間がかかるといった問題があった。

こうした課題に対し、膨大な点検画像からコンクリートの劣化要因をAIが機械学習する仕組みを開発。現場の点検画像から劣化要因や健全性を自動的に判定することにより、「判定時間の短縮や点検技術者の時間の有効活用を可能にしています」と森口は効果を説明する。

また、自然災害被害抑止に向けた「斜面状態モニタリング」の実証実験を実施。東京発電の仁科川第三発電所(静岡県西伊豆町)の水圧管路周辺に、日本ユニシスの斜面状態モニタリングのセンサーを設置して斜面の状態変化のデータ(振動、傾斜、温度、湿度、雨量、映像など)を収集し、監視システムとしての有効性を評価している。

ビル設備保全の事例として、森口は「IoT設備点検プラットフォーム」を説明した。IoTビジネスプラットフォームをベースに、センサーやカメラなどIoTデバイスからのデータを監視し、設備の故障前の異常検知や劣化状態を診断する遠隔モニタリングサービスがある。また、点検作業員にウェアラブルデバイスやタブレット端末を持たせ、点検報告業務を自動化する点検・報告業務支援サービスや遠隔作業支援サービスを提供する。

マイクロソフトと日本ユニシスは今後、急速な市場拡大が見込まれるIoTビジネスにどう取り組んでいくのだろうか。「マイクロソフトでは、2021年までの4年間に50億ドル(日本円換算で約5350億円)をIoTに投資します」と菖蒲谷氏は強調する。そして、製造、流通、ヘルスケア、スマートビルディング、エネルギー、セキュリティの6分野に注力するという。菖蒲谷氏は「IoTをシンプルにするソリューションをご用意し、日本ユニシスさまやパートナーの皆さまと共にさまざまな価値を提供していきます」と意気込みを述べた。

そして、森口は「今後もアセットガーディアンに注力するとともに、IoTビジネスプラットフォームを軸に社会、企業の課題解決に向け、新たな顧客価値と新規サービスを創出していきます」と語った。

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