急成長する新興勢力「ネオバンク」は経済を変えるか

新ビジネス創出で金融業界の変革を支援

最近、メディア報道などで「ネオバンク(NeoBank)」という言葉を耳にする機会が増えている。直訳すると「新しい銀行」だが、ネオバンクが従来の銀行と具体的にどう違うのかは、意外に知られていない。金融機関でのIT活用が急速に進みつつある現在、その特徴や経済に与えるインパクトについて解説する。

銀行はクローズからオープン、そしてカオスへ

日本ユニシス株式会社 ファイナンシャル第三事業部 ビジネスクリエーション統括部長 三澤聰司

日本ユニシス株式会社
ファイナンシャル第三事業部
ビジネスクリエーション統括部長
三澤聰司

金融業界において最近の大きな話題の1つが「ネオバンク」である。現在のところ、この言葉は明確に定義されていないが、金融におけるIT活用の名称である「フィンテック(FinTech)」の技術を使って金融サービスを提供する事業者を示すものとして扱われているケースが多い。「ネオバンクの"Neo"という言葉は、過去から存在してきたものが変化するという意味合いを持っています。最近の動きは金融業界の"常識"とされていた枠組みを超える、新たなカルチャーが出現したことを意味します」と地方銀行担当として企画、営業の業務に携わる日本ユニシスの三澤聰司は指摘する。

従来、金融機関と顧客とを結ぶ接点は主に窓口であり、情報量の限られた「クローズ(閉ざされた)」な世界だった。年間15億台に迫る数のスマートフォンが出荷される現在、今後は一層デジタル化が進むと予想されるが、ネオバンクという新たなプレーヤーが加わり支持を高めている状況下では、顧客との関係にも大きな変化が生じてくるだろう。三澤はこれを「クローズからオープン、そしてカオスの世界への変化」と表現している。

オープンの世界は、インターネットやスマートフォンの普及に代表されるIT環境の整備がもたらした変化といえる。例えば、窓口へ出向かず取引できるオンラインバンキングは、便利な顧客サービスとして浸透した。そして、フィンテックなどの新技術導入や参入障壁の低下により、さらに競争が激化しているのが現状である。

カオスという言葉からは混乱、不透明といったイメージも受けるが、顧客サイドから見れば選択肢が広がり、より高度なサービスが受けられるという点で歓迎される変化である。これまで個別に存在していた金融機関とネオバンクなど非金融の事業者が融合し、ともに社会に不可欠なものとして浸透することは、未来の経済を発展させる原動力になるといえるだろう。

銀行と顧客の関係変化

変わりゆく銀行と顧客との関係

新興勢力であるネオバンクの成長が注目される中、既存の銀行は「期待と不安」を抱きつつ、長年培ってきた顧客との信頼関係を武器とした多面的な施策に取り組んでいる。その一例として三澤は、銀行側から見た対外的なアプローチを3つのモデルに分けて示した。

まず、「機能拡張型地元貢献」として、自行が持つ機能やサービスを拡張して地域とのリレーションを深める方法。これは、預金取引に代表される銀行としての業務に加え、AI(人工知能)を活用した営業支援や、IoTデータの管理支援といった業務も提供することにより、企業の経営空間にどれだけ入り込んでいくかがポイントになる。

「新たな生活空間創造」では、顧客の生活の場に浸透していくための取り組みを挙げている。ここでは地元企業とのタイアップにより衣・食・住という生活サービスのほか、レジャーや健康面などのサポートを幅広く展開し、顧客への付加価値提供により新たな潜在ニーズを把握する意味合いがある。

「ビジネスエコ型事業創造」は、自治体をはじめ観光、医療、物流ほか非金融業界との連携と地元の支持を結びつけ、地域活性化を支援するものである。本モデルには多くの企業、団体が参加するため、価値観の共有や利害関係調整など難易度は高いといえるが、円滑に連携が進むことで共存共栄が実現し、提供者、利用者双方にメリットのある関係構築が期待できる。

状況に応じた銀行の多面的アプローチ

新たな価値提供で果たす「カタリスト」の役割

これまで、日本ユニシスは勘定系システム「BankVision」を筆頭に、主に銀行の基幹業務を支えるソリューションを提供してきた。ネオバンク参入でさらに業界再編が進むと予想される現在、同社は「付加価値の提供」と「新ビジネス創出」をテーマとした新領域のサービスを提案している。

「付加価値の提供」では、タブレットを活用した営業店システムや、キャッシュレス化やインバウンドに対応する決済プラットフォームのサービス、さらにAIを活用したデジタルバンキングにより、銀行と顧客との関係を深めることを目指している。

「新ビジネス創出」では、フィンテックや先端テクノロジーを活用し、地域活性化への取り組みや社会課題の解決を目標に研究開発を進めている。具体例としては、銀行と非金融プレーヤー間の連携に不可欠な銀行API公開サービスや、キャッシュレス社会に向けた決済・チャージポイント事業、サービスロボットを活用した店舗接客支援などがあり、同社はビジネス創造プラットフォームである「Financial Foresight Lab」などを通じ、オープンイノベーションで活発な議論を重ね、新たな価値創造に取り組んでいる。

「これらの活動はすべて"究極のカスタマーファーストの実現"を目標にしています」と三澤は語る。蓄積したシステム、サービス、ノウハウ、人材などを有効に活用し、企業と顧客を結ぶカタリスト(触媒)となるべく、同社は今後も努力する計画だ。

銀行領域における取り組み